宇宙人の写真は本物? 「写真が本物か」と「宇宙人が写っているか」は別の話です
宇宙人の写真が本物かどうかを調べると、答えは「本物です」か「偽物です」の二択で返ってきます。ところが有名な写真を一枚ずつ追いかけると、この二択では足りません。写真そのものは加工されていないのに、写っていたものが宇宙人ではなかった、という例がいくつもあるからです。
つまり、宇宙人の写真には少なくとも2つの問いがあります。1つめは「この画像は加工されたものか」。2つめは「写っている物体の正体は何か」。この2つを混ぜたまま議論すると、話がかみ合いません。「写真は本物だ」と言う人と「宇宙人なんて写っていない」と言う人が、どちらも正しい、という状態が起きます。
以下では、有名な宇宙人の写真・映像を6件取り上げ、証拠の強さで3つの階層に仕分けます。作った本人が認めた偽物から、政府が公式に公開した本物の映像まで、同じ物差しで並べます。うじとうえだのブログではUFOの正体や古代の壁画に描かれた宇宙人らしき姿も同じやり方で扱ってきました。今回はその物差しを、写真に当てます。
宇宙人の写真を3つの階層に仕分ける物差し
宇宙人の写真は、証拠の強さで3階層に分けられます。階層1は制作者が偽物だと認めたもの、階層2は写真は本物だが正体が判明したもの、階層3は公的機関が公開した本物の記録です。この順で見ていくと、どこまでが確定した事実かがはっきりします。
階層を分ける基準は、次の3点にしました。
- 階層1:作った本人、または公的機関が「作り物だ」と発表したもの。ここは議論の余地がありません
- 階層2:画像そのものは加工されていないが、写っていた物体の正体に有力な説明がついたもの
- 階層3:政府や研究機関が公開した本物の記録。ただし、その機関は「宇宙人」とは一言も書いていない
この並べ方には、はっきりした利点があります。どの階層にいるかが分かれば、その写真について自分がどこまで言い切ってよいかが決まるからです。階層1の写真を根拠に「宇宙人は実在する」と語ることはできません。逆に、階層3の映像を「全部見間違いだ」と片づけるのも、記録された事実に合いません。
【階層1】宇宙人の写真を作った本人が、あとから作り物だと認めた2件
いちばん有名な宇宙人の映像と、いちばん話題になった宇宙人のミイラは、どちらも階層1に入ります。前者は制作者が2006年に自分で認め、後者は2024年にペルーの検察が発表しました。世界中で報じられた2件が、この階層にあります。
エイリアン解剖フィルム(1995年)
白黒の粗い映像で、手術台に横たわる灰色の体が切り開かれていく。1995年8月28日にアメリカのFoxで放映されたこの映像は、世界中に配信されました※1。ロズウェルで回収された宇宙人の解剖記録だ、という触れ込みでした。
映像を持ち込んだのは、イギリスの音楽プロデューサーのレイ・サンティリです。そして2006年、サンティリ本人が「配信されたのは自分たちが作り直したものだ」と表明しました※1。特殊効果の担当者が模型を作り、内臓には地元の精肉店から仕入れたものを使っていた、という制作の中身まで明らかになっています。
ここで押さえておきたいのは、サンティリが「全部の作り話だった」と言ったわけではない点です。本人の説明は「本物のフィルムが劣化してしまったので、記憶をもとに再現した」というものでした。ただし、その元になったという本物のフィルムは提示されていません。提示されていない以上、確かめようがない話として扱うほかありません。
ナスカの「宇宙人のミイラ」(2017年〜)
指が3本しかない、頭の細長い小さな遺体。ペルーのナスカ周辺で見つかったとされるこのミイラは、2023年にメキシコの議会で公開されて一気に広まりました。
2024年1月12日、ペルーの検察庁と文化省が開いた記者会見で、法医考古学者のフラビオ・エストラダが鑑定結果を発表しています※2。結論は、紙・接着剤・金属、そして人間と動物の骨で組み立てられた人形である、というものでした。使われていた接着剤が現代の合成接着剤だったため、スペイン到来以前に作られたものではない、とも述べられています※2。
この発表のあとも、別の専門家が「指紋が人間のものと一致しない」と主張するなど、反論は続いています。ただし、国家機関が押収した現物を調べて出した結論と、個別の主張とでは、証拠の重さが違います。ここでは前者を採り、後者は【推測・確信度低】として扱います。
【階層2】宇宙人の写真は加工されていない。写っていたものが宇宙人ではなかった
階層2は、写真そのものに手が加えられていない例です。ネガも撮影状況も疑われていないのに、写っていた物体の正体が別のものだった。この階層には、火星の人面岩と、イギリスで撮られた宇宙服の人物が入ります。どちらも解像度と時間が答えを出しました。
火星の人面岩(1976年)
火星のシドニア地域に、人の顔そっくりの地形が写った。1976年7月25日から31日にかけて、探査機バイキング1号が高度1873キロメートルから撮影した画像です※3。顔に見える部分の差し渡しは約1.5キロメートルありました※3。
この画像は加工されていません。NASAが公開した本物です。問題は解像度でした。当時の画像では1画素が数十メートルあり、影の落ち方しだいで目にも鼻にも見えてしまいます。
決着がついたのは25年後でした。2001年4月8日、マーズ・グローバル・サーベイヤーが同じ地形を1画素あたり約2メートルで撮り直しています※4。そこに写っていたのは、火星の遷移帯にいくらでもある、ただの丘でした※4。顔ではありませんでした。
人面岩の例が教えてくれるのは、画像の粗さそのものが、見る人の頭の中で形を作るということです。粗い画像に意味を読み取る働きは、人の目が持っている性質であって、写真に写り込んだ何かではありません。
ソルウェイ湾の宇宙服の人物(1964年)
1964年5月23日、イングランドのカンバーランド地方、ソルウェイ湾に近いバラ・マーシュで、消防士のジム・テンプルトンが娘の写真を撮りました。現像された1枚には、娘の背後に白い宇宙服のような人物が立っていました。フィルムを調べたコダックの分析担当者は、写真に加工の跡は無いと確認しています※5。
2014年、ジャーナリストのデイビッド・クラークが別の説明を示しました。写り込んでいるのはテンプルトンの妻のアニーではないか、という説です※5。根拠として挙げられたのは、妻がその日に淡い青のドレスを着ていたこと、露出が過剰で白く飛んで見えること、画像を暗く補正して水平を直すと、後ろ姿の人物に近づいて見えること、の3点でした※5。
この説は決定的な証明ではありません。【推測・確信度中】として扱うのが妥当です。ただし、宇宙服を着た何者かを想定するより、その場にいた人物が写り込んだと考えるほうが、追加の仮定が少なくて済みます。
【階層3】政府が公開した本物の映像。ただし「宇宙人」とはどこにも書かれていない
階層3は、アメリカ政府が公式に公開した記録です。海軍機のセンサーが捉えた映像と、その分析報告が実在します。ただし、報告書のどこにも「宇宙人」「地球外」という結論は書かれていません。ここが、ネット上の紹介と原文が最も食い違う場所です。
2021年6月25日、アメリカの国家情報長官室(ODNI)が、未確認航空現象に関する予備評価を公表しました。対象は2004年11月から2021年3月までに政府内で報告された事案です※6。数字を原文から拾うと、こうなります。
- 政府機関からの報告は144件※6
- そのうち80件は、レーダーや赤外線など複数のセンサーで同時に捉えられていた※6
- 高い確度で正体を特定できたのは1件だけ。その1件は、空気が抜けかけた大型の気球だった※6
- 残りは説明がついていない※6
「143件が未解明」という事実は、たしかに重い。けれども報告書が言っているのは「説明できていない」であって、「地球外の乗り物だ」ではありません。この違いを飛ばすと、原文が言っていないことを原文の権威で語ることになります。
2023年9月には、NASAが独立研究チームの報告書を出しました。16人の専門家が集められ、公開された映像や報告を検討したものです※7。この報告で特に効いてくるのが、データの質についての指摘でした。分析を妨げているのは、センサーの較正が不十分なこと、測定が1系統しかないこと、センサーの付帯情報が残っていないこと、比較のための基準データが無いこと。報告書はこの4点を挙げています※7。
言い換えると、スマートフォンで撮った1枚の画像は、どれだけ鮮明でも科学的な判定の材料にはなりにくい、ということです。距離も大きさも速度も分からないからです。実際、有名な「GO FAST」の映像についても、NASAの報告書は、物体が異常な速度で動いている必要はなく、海面より温度が低く写っている以上、推進装置の熱を示す証拠は見当たらない、と分析しています※7。風に流されている可能性が高い、という読み方です。
宇宙人の見た目が「グレー」に揃っている理由と、いまも決着していない写真
宇宙人の写真を並べると、灰色の肌・大きな黒い目・小さな口という姿に驚くほど揃っています。この一致は、目撃が正確だった証拠にも見えます。ただし、絵や映像が先にあって、それが記憶の形を整えた可能性も同じくらいあります。
いわゆるグレイ型の姿は、1960年代以降の事件の再現画、テレビ映画、雑誌の挿絵を通じて広まりました。一致しているのは目撃者ではなく、目撃者が事前に見ていた図像のほうではないか、という見方です。これは【推測・確信度中】です。個々の目撃者が何をいつ見たかを全部たどることはできないため、断定はできません。それでも、階層1と階層2の例が示すとおり、人は粗い情報に既に知っている形を当てはめます。
では、いまも説明がついていない写真は残っているのか。残っています。1950年5月11日、アメリカのオレゴン州マクミンビルで、ポール・トレントと妻のエヴェリンが撮った2枚です。この写真は同年6月26日号のライフ誌に掲載され、世界に広まりました。
特筆すべきは、この写真が政府の調査対象になった点です。1969年のコンドン報告(コロラド大学UFO調査計画)は、この事例をこう記しています。調べたすべての要素、すなわち幾何学的・心理学的・物理的な要素が、銀色で金属的な円盤状の物体が2人の目撃者の前を飛んだという主張と矛盾しない、数少ないUFO報告の1つである※8。
ただし同じ報告は、留保も付けました。2枚の写真で物体が頭上の電線の同じ部分の下に写っている点は、吊るされた模型を支持する論拠として使える、という指摘です※8。1980年代には、納屋の影の向きから撮影時刻が朝だった疑いがあること、車のサイドミラーに似ていることなども指摘されました。
結論として、マクミンビルの写真は階層1にも階層2にも落ちていません。偽物と証明されてもいないし、正体が判明してもいない。76年たった現在も、その状態のままです。
宇宙人の写真を自分で見分ける5つの質問
専門機材が無くても、写真の階層はある程度まで自分で絞り込めます。次の5つを順番に当てるだけで、階層1のものはほとんど脱落します。残ったものだけを、じっくり見ればよいわけです。
- 1. 元の画像はどこにあるか。 転載された画像ではなく、最初に公開された場所までさかのぼれるか
- 2. 撮った人の名前と日付が特定できるか。 「ある軍関係者が」で止まるものは、確かめる手段がありません
- 3. 現物は残っているか。 ミイラや破片は、機関が押収して調べられます。画像しか無いものは、そこで行き止まりです
- 4. 大きさと距離が分かるか。 比較できる物が一緒に写っていない画像からは、大きさも速度も出ません
- 5. 公的機関が何と書いたか。 「未確認」と「地球外」は違う言葉です。要約ではなく原文に当たる
この5つは、私が別の場面で身につけたやり方でもあります。以前、投資用不動産の営業を20社から聞いたことがありました。結局その物件は買いませんでしたが、判断できたのは、20社の話を横に並べたからです。どの会社も同じことを言う部分と、会社によって食い違う部分がはっきり分かれました。食い違う部分は、各社が自分で計算していない部分でした。
宇宙人の写真も同じ構造をしています。どの紹介記事にも共通して出てくる部分(撮影日・場所・現物の有無)と、記事ごとに変わる部分(誰がどう解釈したか)を分ける。変わる部分は、その記事が自分で確かめていない部分です。
この見分け方を事例ごとに追いたい方には、ASIOSのUFO事件クロニクル(彩図社・2017年)が向いています。有名事件を1件ずつ、報道と一次資料を突き合わせて追いかけた本で、この記事で扱ったエイリアン解剖フィルムやマクミンビルの写真も収録されています。もう少し全体像から入りたい場合は、皆神龍太郎のUFO学入門 伝説と真相(楽工社・2008年)が、事件史そのものの流れを扱っています。
まとめ:宇宙人の写真は「白か黒か」ではなく「どの階層か」で見る
宇宙人の写真について結論を1行で書くなら、6件のうち偽物と確定したのが2件、正体が判明したのが2件、政府が公開した本物の映像が1件、未決着が1件でした。「全部作り話」でも「政府が隠している」でもない、という並びです。
この記事で見てきたことを、もう一度並べておきます。
- エイリアン解剖フィルム(1995年)と、ナスカのミイラ(2017年〜)は、制作側と公的機関が作り物だと発表した
- 火星の人面岩(1976年)とソルウェイ湾の人物(1964年)は、画像は本物で、写っていたものに説明がついた
- アメリカ政府が公開した記録には144件の未確認事案があり、そのうち高い確度で説明できたのは1件だけ。ただし報告書は「地球外」とは書いていない
- マクミンビルの写真(1950年)は、いまも階層が確定していない
階層で見ると、宇宙人の写真はむしろ面白くなります。どこまでが分かっていて、どこから先が分かっていないか、その境目がはっきりするからです。境目が見えたところから先が、都市伝説の本当に面白い場所だと思っています。
同じ物差しでエリア51で公文書が認めた事実や宇宙人にまだ出会えていない理由も仕分けてあります。あわせてどうぞ。
出典
- ※1 E.T. or B.S.? When Fox Aired Its Infamous 'Alien Autopsy' in 1995(Mental Floss)
- ※2 Peru's 'alien corpses' are dolls made with human, animal bones and glue: experts(Global News)
- ※3 The Face on Mars(NASA Science)
- ※4 Highest Resolution View of Face on Mars(PIA03225)(NASA/JPL Photojournal)
- ※5 Solway Firth Spaceman(English Wikipedia)
- ※6 Preliminary Assessment: Unidentified Aerial Phenomena(2021年6月25日)(米国家情報長官室 ODNI)
- ※7 Unidentified Anomalous Phenomena Independent Study Team Report(NASA・2023年9月)
- ※8 Scientific Study of Unidentified Flying Objects, Case 46(コンドン報告・コロラド大学・1969年)
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